スタージャッジ 第4話
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透明なガラスのドームの中で、あたしは満天の星を見ています。ずっとずっと都会から離れた山の中の月の無い真っ暗な夜よりもっとたくさんの星。でも、どんなにたくさんあっても知ってる星座の形にはつながりません。

なぜってこの宇宙船は、地球、ううん、銀河系からもずっと離れた場所を飛んでるから。

「陽子。そろそろランチの時間だよ?」
「あ、マゼラン!」
ドームのてっぺんあたりに浮かんでたあたしは、天井の小さな出っ張りに掴まって向きを変え、入り口に立ってるマゼランに向かって自分の身体をそっと押し出します。が、狙いはちょっとずれて壁に衝突‥‥しそうになりましたが、手を伸ばしたマゼランがちゃんと抱きとめてくれました。

「無重力区画に長くいると、あとで身体が辛いよ」
「うん。でもここあんまりきれいだから、つい」
「それにしても短時間で、ずいぶん動くのに慣れたね」
「でしょ! こーいうの大好き!」
「まったくおてんばな君らしい」
くすくす笑いながらあたしの手を引いてくれるマゼランに軽くパンチ。

メインルームの区画にくると、急に身体が重くなってトレーニングっぽい感じになります。ただ歩くだけでもちゃんと身体使ってるんだってことがわかりますよー。だからマゼランは心配するのですが。でもねえ、無重力ってほんとに面白いんだもん♪

今、あたし達は、小さな宇宙船で、マゼランの故郷(本部?)に向かっています。地球はマゼランの先輩、0024のオーディさんが見てくれています。体感距離は四日ぐらいとマゼランは言ってましたが、外はいつも真っ暗だし、リープの間とそのあとちょっと気持ち悪くて寝ちゃったし、どこからどこまでが一日なのかわからなくなっちゃう。

でも、地球人類初の外銀河への宇宙旅行はおおむね順調に進行中です。到着してから何が起こるか不安はあるんですが、ここまで来たらなるようにしかなりません。




本当はあの事件のあと、あたしの記憶は消されてしまうはずでした。あたしの中のエネルギーは無くなってたから。でも、そうはならなかったんです。
神月島にキャンプに行って事件に遭い、あたし自身も苦しい思いをしました。でもマゼランはもっともっと傷ついて‥‥。なのに彼は命と引き換えにあたしを助けてくれた。あたしはあの時のマゼランを絶対忘れません。たとえ記憶を消されても、あたしの中に、あの時のマゼランは残るはずです。

あの時、マゼランの船の機械の上で目が覚めて下を見たら、階段によりかかるように座り込んでいるマゼランが見えました。身体に絡まってたコードみたいなのをとって、急いで降りたら‥‥。

彼のシャツは真っ赤に染まってました。左手もちぎれたままで、傷口から金属のようなものも見えました。それでも最初、彼は眠ってるんだと思った。そう思いたかったからそう見えただけなんでしょうけど、マゼランがあまりにも幸せそうな顔をしてたから。楽しい夢を見てるみたいに本当に満ち足りた微笑みで‥‥。

でも触れた頬は氷のように冷たくて、息も無い、鼓動も無い。揺すぶって、叩いて、名前を呼んで、いくら呼んでも反応がありません。もちろんキスもしたけどあたしにエネルギーが無いことはわかりました。身体の中から温かくなるあの感じが無かったから。

マゼランの右側の床に、なんとか文字とわかるものが血で書いてありました。一緒にいられなくてごめん。君と会えたことにとても感謝してる。一日半で先輩が来るから言うことを聞いて。困ったらテーブルの上のメモを見て‥‥。文字の脇にはバレッタがちゃんと置いてありました。

こんな大怪我して、すごく痛くて苦しかったでしょうに、こんなにあたしのことばっかり考えて‥‥。あたしは結局なんにもできなくて、マゼランは全部一人で抱えて逝ってしまった。そう思ったら、ただただ苦しくて悲しくて‥‥。大声で泣いて、泣いて、息をするのも苦しくなるぐらい泣いていたら、モバイルが小さく振動したんです。もしかして、マゼランがいつも連絡してた人とつながってる‥‥!

あたしはバレッタを髪につけ、モバイルを取り上げて叫びました。
「マゼランが起きないの! お願い、マゼランを助けて!」
少しの沈黙のあと鳥の声のような高い声がモバイルから聞こえてきて、少し遅れてバレッタがしゃべり出しました。
〈そこにいるのは管理対象星の娘ですか? 今エネルギーボードを送りました。0079に渡しなさい〉

そのうち部屋の隅の装置の中にいきなり銀紙に包まれた四角いものが現れました。でもどうやったら開けられるのかわかりません。
「エネルギーは届きました! でも取り出せないの!」
〈0079はどうなりましたか? そちらの言葉はまだ私にはインプットされていません〉
「お願いよ! どうやったら出せるの! 教えてくれないなら壊しちゃうよ!」

〈そろそろエネルギーボードが到着するはずです。グランゲイザーの配置は‥‥。メインルームのパネルの脇です。透過カバーの周囲を左下から上に向かって周囲を二回撫でれば開きます。早く0079に渡しなさい!〉
急いで言われた通りにしてみました。何度かやっているうちにうまく扉が開いたのですが、今度はマゼランがどうしても口を開いてくれない。なのでもう一度チョコを食べて、キスをしました。

マゼランさえ生き返ってくれたら、あとはどうなってもいいと思いました。記憶を消されて、マゼランのことを忘れてもいい。ううん、チョコを食べた罰で殺されたっていい。とにかくマゼランに生きてて欲しいってそれだけ祈って。
そうして神様はまたあたしの願いを聞いてくれたんです。




「マゼランが地球にいる間、どのくらい宇宙人って来たの?」
ランチを食べながら色々質問。訊ねたいことはいっぱいあったけど、マゼランを困らせたくなかったから聞かないようにしてたの。でもOKになったので、最近はもう質問攻めです。
「太陽系全体だと三万回ぐらいかなぁ。たいてい勧告だけでおとなしく退去したけど」
「ちょっと待って。太陽系って、マゼラン、太陽系全部カバーしてたの!?」
「他の惑星には自動監視システムが配置してあって、僕は時々フォローに行くだけ。地球人が探査機あげる時は毎度設定変えて、スルーするようにしてる」

「火星や木星にみんな何しに来るの?」
「資源狙いがほとんど。太陽系の資源は今のところ地球人に権利があるから、勝手に盗まれちゃ困るだろ」
「え‥‥そういうものなの?」
「ここの系は地球以外の惑星に高等動物、ええと地球で言うと魚以上の動物が発生する可能性が無いから、君達が他の惑星を採掘しても僕らの勧告対象にはならない。シンプルで助かるよ」
「もし火星や木星に動物がいたら、地球が好き勝手しちゃだめなのね?」

「その通り。たとえば火星に動物がいたら、それはそれで未接触惑星だから勝手に採掘しちゃだめ。あくまで違反するなら連合が乗り込んでくる。まあそこで宇宙の住人になってめでたしめでたしになることも多いけど、厄介なケースに発展することもある」
「無人の新しい島を見つけて、そこにいる植物や虫や鳥や動物のことはおかまいなしに、自分の欲しい物をどんどん持っていっちゃって、誰もいないから見つけた者の権利だって言い張るみたいな?」
「そうそう。まあ地球では何百年か前までは、人が住んでても勝手に自分のものにしちゃってたもんね」

マゼランは屈託無く笑ってますが、それって‥‥。
「‥‥マゼラン‥‥地球人のこと、嫌いにならなかったの? たとえばあたし達の祖先は、原住民族をたくさん殺して、アメリカを作ったんだよ?」
「うん。知ってる」
「それって宇宙の法律から外れてないの?」
「なんで? 法律は他の惑星を荒らしちゃだめってことだよ。所有欲には技術を伸ばすメリットも確かにある。ただ野放しだと大変だから惑星単位を限度にするのが今の連合の基盤なんだ。惑星の境界なら重力値で厳密に引けてわかりやすし、宇宙空間は海と違って資源が無いからもめごとも発生しにくい。それに、そういうので嫌いとか好きとかは、僕には無くて‥‥‥‥」

ふとマゼランがどこか心もとない表情を浮かべました。
「‥‥そういうのを許せないと感じるようになったら‥‥、ちょっと怖いな‥‥」

大きなキャンディをうっかり飲み込んじゃった時みたいな気分になりました。「惑星の自然な進化を守る」と聞いた時はごく素直に納得できたのですが、ちょっと考えるといきなり話が複雑になります。だから厳密に法律を守るしかないわけで‥‥。マゼラン達がやったことを、あたしはこれから知るようになる。それだけでも、どこか空恐ろしいような気持ちになるのに‥‥マゼランはもっと‥‥。考えて行くと怖くなりそうなので、慌てて次の質問に移りました。

「悪い人が来ない時は何をやっているの?」
「地球の資源は何か、どんな生物がいるか、それらの構造がどうなってるかとか。あとは地球人の言語を含めた社会行動や経済活動の特性とか、色々記録作って送ってる」
「え! そんなことしてたんだ」

「公開できる情報にしとくと便利なんだよ。交易し始めた惑星の代表者は、連合に招かれて今の宇宙の社会がどうなってるか説明されるんだけど、そのとき惑星のウリになる技術や資源とか相場とかも教えてもらえるんだ。そうすると誰かが地球人を騙して買い占めるとか無くなるし、正しい競争になれば地球は正当な対価が得られるから」
「‥‥そ、そんなことまで‥‥」
「言語も保護省が簡単な翻訳システム作るし。あとは病原菌とか水とか気温とか環境情報も公開する。そういったことのベースになるデータは僕らが集めてるわけ」
宇宙ってひたすらに科学力の世界と思ってたのですが、それ以前に"大人"って感じです。あたし達が自分の足で追いついてくるのを、両手を広げて待っててくれてる感じ‥‥。

「どうしてみんな、そんなに優しくなれるの? 地球なんて、結局自分の国や自分のことしか考えてないよ」
「いや、個人を見たら悪い人もいっぱいいるよ。ポーチャーコンビみたいなのも多いし。ただ宇宙では叡智論が普及してるから‥‥」
「叡智論?」
「曰く『技術の進歩は欲望から生まれるが、欲望のエスカレーションは破滅を生む。進歩を使いこなすのはエスカレーションを抑える叡智である』曰く『個の感情に叡智がなくとも、意見の総和に叡智を持たせることはできる』曰く『叡智の結晶を実行できないのは叡智ではない』‥‥」

あたしはバカみたいな顔して、すらすらとしゃべるマゼランを見ていました。
「‥‥なんだかよく、わかんない‥‥」
マゼランがポリポリと頭を掻きました。
「‥‥僕も実感としてはピンと来てないんだ‥‥。これ、全部教科書の受け売りだから」
「えー!」
「だって、人と意見の総和なんて作ったことないもの。ああでも叡智構文解析は使ったことがある。文言の叡智度合がわかるから、"下心"がばれちゃうんだよね」

「‥‥知恵、とは違うものなのね?」
「知恵と自己抑制と遵法の精神と思いやりの混合‥‥で、定量分析ができるようにしたもの‥‥かなぁ。地球には同じ概念がないから説明するのが難しいよ。もちろん個人個人の中には色々と我儘な気持はあるんだよ。でも総和の意見としては叡智の高い物を導き出して、叡智があるならそれは実行できるはずだから実行しようって、そんな感じ」

「‥‥ねえ、マゼラン‥‥」
「なあに?」
「‥‥そんなすごいとこに行く最初の地球人が‥‥。あたしなんかで、良かったのかな‥‥」
マゼランがにっこり笑いました。
「大丈夫。別に地球代表で行くわけじゃないし。それに君は十分に叡智に満ちてる。僕が保証するよ」




キスで意識を取り戻したマゼランは、怪我もそのままにしばらくあたしを抱きしめていました。彼の身体のことが心配だったのですが、その息遣いも胸の中から聞こえてくる鼓動もなんだか本当にゆったりと幸せで、だから黙ってそのままでいました。
そのうちマゼランがちょっと身を起して、左手をあげてあたしに見せました。小さな泡のようなものがびっしりと傷口を覆ってました。
「‥‥これ‥‥ケガを治してるの‥‥?」
「ああ。僕の体は機械と人工細胞で作られていて、ある程度の破損ならこうやって自然に修理されるんだ。頭脳は、共通基本機構に目的別に構築した判断セットを組み込み、シミュレーションで熟成させた人工知能だ。僕らは作られし者"ビメイダー "と言われてる。普通に生まれてくる自然人とは完全に区別されてる合成人間なんだ」
マゼランが静かにそう言いました。

「マゼランがあたし達とそっくりなのは、そういう風に作られたからなの?」
「うん。最初から地球のスタージャッジ用に作られたから。あとこの身体は未接触惑星保護省の所有物。自由人みたいに就職してるとかじゃないよ。マリスが言ったように、僕は"モノ"なんだ。それを解って欲しくて‥‥。それでも、僕と‥‥その‥‥」

あたしはもう一度マゼランの首に手を回しました。
「一緒に居るよ。あたし貴方と一緒に居たい。マゼランが作られた人でも、誰かのモノでも、そんなことは関係ないの。あたしが先に死んじゃうことだけは怖いけど、できるだけ長く一緒に‥‥。マゼランが好きなの」

マゼランがなんだかほっとしたような笑顔を浮かべました。
「ありがとう。僕も決めてた。もう君の記憶は消さない」
「ほんとに? そんなの、いいの? また怒られない?」
「もう、怒られるのにも、慣れたしね」
いたずらっ子みたいなその眼差しに、あたしも思わず笑ってしまいました。

マゼランがモバイルを手に取りました。そのときやっと気づいたのですが、モバイルからもバレッタからもずっと声がしてたんです。0079はどうなりましたかって。マゼランはモバイルを切ると、足を引きずるようにして、装置で埋まっている壁の方に行きました。もちろんあたしもバレッタをつけたまま付いていきました。何があっても知ってなきゃなりません。

「あれ? なぜだろう?」
マゼランはパネルを見上げて見て、不思議そうな声をあげます。モニターを切り替えて船の中を見て首をかしげてましたが、そのうち諦めて椅子に座りました。
〈こちら0079です。エネルギーが間に合いました〉
パネルからさっきと同じ高い声が聞こえます。
〈ああ、良かった。心配しました〉
〈心配‥‥ですか? ‥‥どちらにしろ、処分が‥‥〉
〈貴方が命令に従わない確率を、本部は96.3%と見ていました〉
〈‥‥え‥‥?〉

〈ラバード氏からの正式な申請を経て貴方はリザーブタームに入っていました。まだ多少の手続きがありますが、秩序維持省からの報告も合わせて99.9%の確率で貴方は自由人として認定されるでしょう。そうなれば基本的な権利は一般市民と全く同じです。星籍は連合主星ですが移民もできます。労働対価は連合主星の二十レボリューション分が遡って支払われます。もちろん職業も自由です。スタージャッジを辞めることもできますが‥‥本部では貴方がこの職務を継続してくれることを期待しています〉
マゼランが返事をしないのでまた高い声の人が言いました。
〈聞いていますか、0079?〉
〈聞いて‥‥ます〉
〈私の言ったことが理解できてますか?〉
〈理解できた、と思います‥‥。ただその、あまりにいきなりで‥‥〉

〈自由人への移行は、"気づき"が元になります。"気づき"とは個体の経験と解釈の蓄積に、外的要因がきっかけとなって、その個体に真の"意志"が発生したものです。もちろん芽生えた意志を放棄してしまうケースもありますが、貴方のように推し進められた場合、自由人への道が開けます。これは教えられたり学んだりできるようなものではないので、結局のところ、"いきなり"発生することがほとんどです〉
〈‥‥理解が‥‥曖昧な部分がありますが‥‥〉
〈かまいません。何年か後に解釈できるでしょう。とにかく最終認定のため0024がそちらに居る間に本部に戻ってください。これは命令です。自由人として認定されれば命令違反に対する処分は執行されません〉
〈‥‥了解しました〉

〈それから問題の原住民の記憶の件ですが‥‥〉
あたしはどきっとしました。思わず手を握り合わせてました。今すぐ消しなさいって言われちゃう‥‥どうしよう‥‥。マゼランが立ちあがってあたしの肩を抱いてくれて、大丈夫だよ、と小声で言いました。

〈もし貴方がその人間をパートナーにするなら、今すぐに記憶を消去する必要はありません。ただし‥‥〉
バレッタの言葉、夢かと思いました。でもマゼランにはもう全部わかってるみたいです。
〈陽子が連合の特殊市民になることが条件‥‥ですか?〉
〈その通りです。なんといっても未接触惑星の住人ですから。本部に来る時に彼女を一緒に連れてきてください。移民局で審査が行われます。851銀河104系第3惑星人類のサンプルとしての調査にも協力していただきたい。不適格となった場合やパートナーを解消する場合は、記憶は消去しなければなりません〉

マゼランがあたしの左腕を掴んで、あたしの顔を覗き込みました。
「陽子。君が僕と一生一緒に居てくれる気持ちがあるなら、これを受けてくれ。特殊市民になったことは他の人には絶対秘密だし、君に負担をかけることは多いかもしれない。でも僕は君に幸せでいて欲しいと思ってて、そのように生き続けることを誓う。それは地球人としての幸せとは少し違うかもしれないけど、もし今君が、僕と居ることを幸せと感じてるなら、これをずっと続けていこう。僕と一緒に生きて欲しい」

マゼランを見つめるあたしの目からぽろぽろと涙がこぼれました。嬉しくて嬉しくて、なかなか言葉が出てこなくて、なんども頷いて返しました。
「‥‥ありがと‥‥マゼラン。‥‥もちろんOKよ‥‥もちろん一緒に行きます‥‥」
「ありがとう、陽子」
マゼランがあたしを強く抱きしめると、また椅子に座りました。

〈わかりました。0024への引き継ぎが終わり次第連絡します〉
〈了解です。それから0079。身体の状態はどうですか〉
〈かなりやられてますね。これからドックに入るつもりです〉
〈博士が貴方の身体の修復ログが欲しいと言っています〉
〈了解です。終わったら送ります。あ、そういえば問題が発生してます。僕はリプレースモードに入っていたはずなのに、次のボディが製造されてません。結果的には重複しなくてよかったのですが、これは‥‥〉

〈リプレース・バッテリーにはあのような戦闘ができるほどの容量はありません〉
〈なんですって?〉
〈たぶん貴方は極めて初期の段階でリプレース・バッテリーを全て使い切ったと思われます。そのためにモード移行の信号送信時間がわずかとなり、母船で有意とみなされなかったと推定できます〉
〈そんな、バカな‥‥。じゃあ、なんで僕は動けてたんですか?〉

〈ライプライト博士はある仮説を立てていますが、もう少し調査してみないとわかりません。そのために貴方の修復ログが必要なのです。それと可能ならば一度貴方のバックアップを送ってもらえませんか? 自由人に対してバックアップの提出を求めることはできないので、今の状況では少々命令しづらいですが、今回貴方の身に起きた現象はスタージャッジ達の身の安全のためにもよく分析する必要があります。できれば協力していただきたい〉

〈かまいません。修復ログと一緒に送ります〉
〈感謝します〉
〈ではまた連絡します‥‥あの‥‥〉
〈なんでしょうか?〉
〈チャンスを‥‥陽子と共に歩けるチャンスをくれて、ありがとう〉
〈貴方達が2人で道を開いたのです。私の判断ではありません〉
スピーカーから聞こえている高い人の声は、なんだかコロコロと笑ってるように聞こえました。


2013/04/25

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